20050916〜24 in Arizona2

 次の日は朝からセドナ。赤い土の惑星……何千年前(いや、何万年前かな?)、セドナは海の底だったそうな。異形の岩岩が細かな層に分かれて微妙な色のグラデーションを作っているのは、何千年もかけて海がなくなる間に水や風によって作られたもの(らしい)。とにかく見たことのない美しい風景に呆然としました。

 あ、そうだ。セドナに着く前に、一度、Lisaがニュービジネスのために倉庫(日本でいうトランクルームみたいなもん)の契約のために寄り道しましたのでした。よくアメリカ映画に出てくるけれど、自分のものを入れておく場所。映画では貧乏な若者が家賃払えずに一時的にものを預けたりとかっていうシーンが多いけど。大きな営業 車の保管とかもやっていて、LisaはVanをそこに置くための契約をしにいくという。

 そこの年配の管理人が南部訛りでいい味出してました。管理人室に入るとダイナソー(恐竜)の骨とか、ミニチュアカーとか、狐や鹿の剥製とか、ネイティブ・アメリカンの民芸品とか、趣味がてんでんばらばらにしか見えないけど、いろんなものが部屋中に飾られていて、おお、いかにも西部の田舎にありそうな倉庫の管理人の部屋って感じでありました。

 Lisaが契約書類にサインしてると、おじさんが「あんたに何かあった場合の連絡先も書いておいてくれよな」とある話を始めました。「前にな、若いヤツが倉庫借りてたんだけど、何ヶ月たっても現れなくなって、仕方なくそいつの知り合いを探し出して調べたら、ガールフレンドのことで揉めて銃で撃たれて死んじまっててなあ。仕方ないんで、親戚・兄弟・親を探し回ったんだよ。で、やっと見つけた親父はニューヨークに住んでいたんだが、電話したら、I don't give a damn! (知ったことか!) っていいやがったよ。まったく。…ま、そういうこともあるんでな、親とか兄弟とかの連絡先は書いてほしいんだよ」

 横で聞いていて思わず「えええ…」と声を出してしまった…。銃で撃たれたってだけでも私にとっては非日常的な話なのに、さらにNYに住んでいる親の言葉にもショック…。Lisaがシアトルにいた時も、知り合いの恋人がバーで口げんかを始めた相手に銃で撃たれて死んだり…。そういう話を聞くたびに、ああ、ここはアメリカなんだなあと改めて思う。ごく普通の人が銃を携帯してるなんて想像できない。でも実際持ってるんですよね…。なんというか、やっぱり自分が住んでないからなのか、アメリカに来てそういう話を見聞きしてもリアルな感じがせず、いつまでたっても映画の世界の話のように思えてしまう…。住んだらそれがリアルな恐怖になるんでしょうね。

 で! そういう複雑な気持ちはひとまず置いておいて…。とにかく私たちは平和に観光であります。車がセドナの町に入った途端、異形の赤い大きな岩岩が見えてきて、とにかく「うわーーー」と声をあげた私。写真ではその美しさの半分も伝えられないのが残念…。本当に別な惑星に来たような風景が360度広がっていて、ため息の連続。そしてセドナの町に入るとリッチなホテルがぞろぞろ建っているし、マクドナルドもバーガーキングもスターバックスもGAPも巨大スーパーマーケットもある! 2日間砂漠の真ん中に幽閉されていた私め、思わずセドナの町に入った途端「CIVILIZATION HERE!!(文明社会だ!)」と叫んで、Lisaと相方に笑われました。だって…アリゾナでは都会にあるものなんてお目にかかれないかと思ってたんで本気で感動してしまった…(失礼)。

 文明どころか、ここセドナは高級観光地で別荘地らしく、アメリカの超お金持ちたち(俳優、有名医者などなど)が別荘を持っていて、自家用ジェット機でやってくるほど有名な場所でありました。そして、町全体がセドナの風景を壊さないために建物の色を徹底的に統一してます。壁はセドナの山と同じような薄赤い茶色、文字や屋根はちょっとくすんだ緑色。

 しかし、町より何より、後でLisa自らジープを運転して2時間以上もかけて走ってくれた大自然の荒野から見たセドナこそ、絶品でありました。ここでまたLisaを尊敬してしまうんだけど、彼女、ここに引っ越してきてから、ニュービジネスを立ち上げるまでの間、ピンクジープというジープで山道を案内するツアーガイドの仕事をまず始めたのです。元々車の運転大好きなうえに、新しい土地を知るためにはもってこいの仕事。しかし、まずはジープで急勾配の山や岩を走り回る練習もするし、ガイドとしての知識も頭に入れなくてはいけない。そして何より早朝から夜遅くまで荒野を走り回るというハードな仕事。それをやりこなしているのだからすごい。で、今日はオフなので、個人的にフリーで私と相方をピンクジープに乗せてプライベートツアーをしてくれるという。これがすばらしい体験でした…。

 

出発!

朝早く起きて、まずは荒野を走りぬける。何もないけど、やっぱり空の美しさにうっとり。

車の中から

珍しくこの日は雲が多く、ますます美しい空。しかし、この日はかなり暑く日差しも強烈でした。途中またどこかの山から煙が立ち昇ってた。山火事多すぎ(たまに山火事を防ぐために燃え易いところをわざと燃やしてることもあるらしいけど)

セドナが見えてきた!

赤くて不思議な岩(山?)が見えてきた。「うわー」と声を出した私に「まだまだこれは入り口」とLisaがすました顔でいう。ふーん。

山の色が違う

どこもかしこも赤い。不思議です。

形も不思議

セドナで撮影されたジョン・ウェインが出ていた西部劇がいくつかあるらしい。確かにいかにもいかにもな風景です。

記念撮影

左側の山は「ベル」と呼ばれてる。そのまんまベルの形をしてるから。右側は……忘れました(汗)

すべてが違う形

赤くて変な形の山がごろごろ…。

崖に作られた教会

セドナの街中に入る前に崖に作られた有名な教会に行く。建設は1956年!私が生まれる前の年。にしては、デザインがモダンです。

教会の中

何故か真ん中に飾られているのはキリストでもマリアさまでもなく、美術品のようなオブジェ(仮面にも見えた)。プロテスタントの教会と思われるけれど、本当に現代的なデザインです。

教会からの風景

教会がある崖から見た風景。美しい…んだけど、目の前にあるお城のような建物はある有名な眼科医(近視手術で莫大な富を得たらしい)が目下建設中の家。成金趣味満開のこんな建物を観光名所の前に建てるとは!と、実はセドナの住人たちには不評だそうです。「本当に醜い建物!」byLisa

教会からの風景2

赤い不思議な形の山と真っ青な空のコントラストが美しい…。

またドライブ

もうどこを撮ってもきれい…って言葉しか出てこない。

高台の展望台

まずは高台の展望台に連れてきてもらい、セドナ全体を見渡すことに。

展望台から

……何も言うことないです。

展望台から

……。

ベル山

この形が気に入った。

風景

……。

風景

……。

風景

……。

風景

…やっぱり何もいうことない。

頂上にルーシーが

この山の右の辺りにちいちゃく人がいるように見えますか? スヌーピーの漫画に出てくるキャラクター、ルーシーがテレビを見てる姿に見えるらしい。

森林を抜けて別な展望台へ

まずセドナ観光をする前に森林がある山を登ることに。砂漠だけかと思ったら途中うっそうとした森林があってびっくり。シアトルを思い出しました。山道にはリスや鹿やスカンクがよく現れるらしく、実際スカンクの轢死体を何度か見てしまいました…。轢かれたばかりのスカンクはめちゃくちゃ臭いです…(かわいいのに;;)。

松の木はバタースコッチの匂い!

ここらへんの松の木は何故かバタースコッチとそっくりの香りがするとLisaがいうので、木に鼻を近づけたら…!!ほんとだ!まさにバタースコッチ!あまりにいい匂いなんでしばらく木にへばりついてました。

記念撮影

よく崖から落ちる人がいるらしいです(汗)

さて。ジープでツアーだ!

セドナに戻っていよいよジープツアー。Lisaが自分のジープを点検してるところ。ジープの下から覗くおみ足が美しいです…。このか細い足ですごい荒野を走り回るとは…。

出発!

まだ舗装された道路なので後ろの席でも快適。でもばっちり安全ベルト着用。かなりの温度だけれど空気が乾いているので風が気持ちいい。

ツアー先

ジープツアーのコースはいろいろあるんだけど、Lisaは、一番長くて一番荒々しくて、誰もいないコースを選択してくれました。いざ、あそこに向って走るのだ!

舗装が途切れていよいよ

「ここからはプリミティブ・ロード」という看板を過ぎたら、がたがたの道。ジープが揺れ出したんで「うわあ」と声を上げたら、「まだ何も始まってないわよ」とLisa。…うーむ。

荒野に向って突き進め

…本当に誰もいないし、四方を見渡してもただただ広い荒野。まさにプライベートツアー!!道もどんどん粗くなってきました。「吐いてもいいけど、ジープの外にね!ルールはそれだけ!」byLisa

赤い道が続く…

ジープはどんどん荒野の奥深くまで進んでいく。動物もたくさんいるらしいんだけど…。かわいいうさぎとかなら見たいなあ。

どこまでいっても荒野

うーん……。広すぎる。誰もいません…。

が、崖が!!

前が見えない! 「崖だよ!」というと「そこを降りるのよー!」とLisa。次の瞬間45度くらいの崖をジープが走り降りる!…うわーーーー。

崖を降りてるところ

もうがっくんがっくん。すごい道!ビデオを撮ってる夫、まともにカメラを握れず、後で見たら自分の膝ばかり映ってました(笑)

崖を下ってまた崖を上り…

一番高い場所に到着。ここまで1時間ちょっと。ピンクジープを降りて休憩。ちょっと運転席に座らせてもらって、「おら、見ただよ、あそこを光った物体が飛んでただ」と、UFOリポート番組ぽく空を指してみる…(馬鹿っぽい…)。

記念撮影

もう最高の眺め。ここでキャンプして夜空眺めながら眠ったら最高だろうなあ。ガラガラ蛇がいるからできないけど。

頂上からの風景

なんともいえない色…。

頂上からの風景2

うっとり…。

ハムナプトラ?

と、勝手に私が呼んだだけ。中腹の岩の部分が崖に作られたエジプトの神殿みたいに見えませんか?映画「ハムナプトラ」にこういう神殿が出てきた。あそこから砂がぐわーーーっと吹き出てくるのです(映画では)。

また荒野を抜けて

空がなんともいえず…。この後1時間くらいさらに荒野を走りました。

荒野を抜けたところ

ジープの旅もそろそろ終わり。

セドナのマクドナルド

町に戻ると、マクドナルドが! セドナの基準に従って、「M」もマークがくすんだ緑色。そういえば、京都のマクドも京都の町に合わせて「M」が茶色ですね。

ベストスポット

ジープから自分の車に乗り換えてLisaが連れていってくれたのは、観光客が通らないベストスポット。絵葉書はだいたいここから撮るらしい。確かに見事な風景。

ベストスポット遠景

少しずつ夕暮れが深くなってきて、ますます雰囲気が出てきた。

ベストスポット@夕暮れ

すっかり夕暮れてきたけれど、相変わらず美しい風景に3人ともぼーっと車の中からしばらくみつめていました。

スヌーピー

帰り道。ルーシーの右下にスヌーピーがいたので写真を撮る。わかるかな…。真ん中あたり、スヌーピーが仰向けに寝転がってる姿に見えます。左が鼻。右が足。

最後の日

最後の日、フェニックスに向う車の中から、サボテンがにょきにょき生えている場所みっけ(たくさんある)。手のように横に張り出す枝ひとつができるまでに100年くらいかかるそうで、手がいっぱいあるサボテンは樹齢が何百年。初めて知りました。びっくり…。

LAの空港で

またもやトランジットで飛行機に乗り遅れ、さらに手配してもらった飛行機が2時間遅れ…。無線LAN繋ぎながらへとへと。後ろの看板に「Great day to be flying (飛ぶには最高の日)」とか書いてあるのに気づいて今更ながらむかつく。

無事日本の家に着きました(;;)

途中ハワイで眠ったけど、やっと戻れた。我が家はほっとするなあ。床に置いたスーツケースで眠る子猫(我が家の新入り猫です)。平和だ…。その横に「Arizona」のロゴがある野球帽…。Arizonaに行ってきたのだなあ…としみじみ。

 

 あっという間の1週間でした。セドナは本当に美しかった…。あの壮大な風景は、私たちが撮った写真では伝わらないと思う…。ちょっと残念。もしアリゾナに行くことがあったらセドナは必見です。そして、我が友、Lisaのホスピタリティには毎度のことながら頭が下がります。毎年やってくるたび、私たちに最高の風景を見せたい、おいしい食べ物を食べてもらいたいと、一生懸命考えてスケジュールを組んでくれる。日本人以上のホスピタリティと細やかさがある。だから17年も付き合えてるのかも…。そして、いつも最後に別れる時に私を抱きしめた後目を真っ赤にして見送ってくれる…。涙もろくて、本当にいい友達です。また来年も行きたい。

 Lisaと別れて、さあ、日本に帰るぞーとフェニックスの空港に着いたのだけど。…今回は、私たちは順調にまっとうに飛行機に乗れない運命だったみたいです…。チェックインしようと思ったら、「予約の便は今日キャンセルで飛ばないんで、他の航空会社の便の席を用意します」とカウンターで言われ、バスに乗って別なチェックイン場所に…。そこで新しい便に乗り込んだら、……なかなか飛ばない!「空港が混雑してるのであと30分待機です」とアナウンス。なんですとーっ。夫と顔を見合わせ…「これは、またLAからの飛行機に乗れないね…」「うん…」。もう、なんか、こういうのに慣れてきたわ…。

 で、案の定LAに着いて、国際便のカウンターに行くと「もう締め切りました」だって…orz で、どうなるのー?(;;)と思ったら、ハワイ経由でハワイ一泊して次の日ホノルルから成田行きの便に乗ることに。はー。また一日無駄になるのーーーっ?(涙) まあいいや。ハワイの夕暮れでも眺めて帰るかと、ユナイティッドが手配してくれたハワイ便のゲートに行くと……。「ハワイ行きの便、3時間のディレイ」という表示が。 はあ…? ………ハワイの夕暮れなんて見るの無理。ハワイ到着どうみても夜8時以降。寝るだけ…。

 もうすっかりまな板の鯉の心境で、LAの空港で無線LANでネットみつつ、だらだらと過ごすこと3時間。その後、やっと飛行機に乗れるかという時になって、今回の旅で一番嫌な気持ちになった出来事が…。ゲートにいた男性職員のあまりに無礼な仕打ちに私と夫大激怒の巻。…この話をくわしく書くと、めちゃくちゃ長くなるので全部は書かないけれど。一部だけ…。行きでバゲージが行方不明になっていたので、確認のために私がその男性職員に「この飛行機にちゃんと私たちのバゲージがローディングされてるか調べてください」と頼んだのですが(そう聞くようにチェックインカウンターの女性に言われてもいた)。

 その男性は一度私の質問を露骨に無視。なのでもう一度声をかけて質問を繰り返すと、やっと面倒くさそうにコンピュータかちゃかちゃして、バゲージを積み込むスタッフに電話した後、「あんたたちの荷物はこの飛行機には積まれてない。どこに行ったのかもわかんないね」とそっけなく答える。…は?と私と夫が驚いていると、「どうせハワイで寝るだけだからいいだろ?荷物は先に成田に着いてるよ。だいたい、ハワイ経由にしないでLAに一泊して明日直行便で帰ればよかったのに」みたいなことをいう(※話し方がすごく失礼な感じだったので日本語訳も私の主観でそういう口調になってます)。…はあ? あなたの会社がハワイ経由を手配したんだけど…?? と混乱。(でもその時はまだ私は怒ってはいなかった。ちなみに荷物はちゃんとその飛行機に積まれていました…。何故彼があんなことを言ったのか謎)。その後ボーディング時に決定的にイジワルというか不愉快なことをされて、珍しく私、ぶちきれました(言い合いになった時に、彼自身アジア系の人だったのに他国から来たアジア人を侮蔑する言葉を吐き捨てたのにはびっくり…。それに関しては怒るというより情けない気持ちになっただけだけど)。

 居合わせたスチュワーデス(フライト・アテンダント)さんが男性職員の対処を「彼のやり方はフェアじゃない。文句いうべき」と応援してくれ、最初代わりに男性職員に話をしてくれたりしました。彼女は、飛行機に乗り込んだ後もしばらく腹が立つというより落ち込んでいた私たちに気を遣ってか、何かと声をかけてくれて優しく世話してくれるんで「親切にしてくださってありがとう」とお礼を言ったら、私たちに照れくさそうに微笑んで「I want you to be happy (あなたたちにハッピーになってほしいの」と言ってくれました。なんというか、胸にぐっときた…。いい人だ…(;;) 本当に彼女のお陰で嫌な気持ちがかなり救われました。まあ、人それぞれ相性もあるし…。実際、彼以外、空港のカウンターや飛行機の中で出会った人たちはみんな親切だった。たまたま、あの男性も苛ついていただけかもしれないし…。まあ、こういうこともあるか…と自分に言い聞かせるも、いろいろ思い出すたび未だむかついてます。

 で、夜9時半、ハワイのホテル到着。へろへろ。速攻で眠り、次の日早朝には成田行きの便に乗り込みました。ハワイの風景全く見ることもなく…。でも。無事に帰れて万々歳であります。やっぱり家はいいなあ。日本はいい国だなあ…。と、海外から帰るたびに思う私。

 ところで、アリゾナ旅行1を読んだ高校の同級生からメールがきてて、「行き当たりばったりな旅行が、あなたの人生そのものだね」と言われた。そうか。私は友達からもずっとそういうふうに見られているのか…と認識。確かに。めちゃくちゃ行き当たりばったりな生き方してるなあ、私って。よくここまで生きてこれたなあと思ったりします。最近、生きていること自体を感謝することがよくある。周りに不幸が続いたり、災害や事故で人があっけなく死んだりするのを見ることが多くなったからかな…。ただ単にそういう年齢になったということかもしれないけれど…。

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