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日付 : 2002年02月18日 (月)
件名 : 作詞家をめざしている方たちへ
 

 最近また作詞に関するメールが増えてきているので、一度どこかに書いた気もするんだけれど、また作詞のことについて書きます。メールは必ず読んでいるんですが、返事を書くのにとっても時間がかかるので、ためこんでいます(すみません…)。時間かけても返事はするつもりですが、作詞家を目指している方たちはことさらにせいて返事を待っていらっしゃると思うので、とりあえずここでよくある質問に答えさせてください。

★作詞を志していて、作品を読んでほしい。作詞家になるにはどうすればよいのか。

 作品を読むことはできますが、私が感想を書いたとしても、作詞家になる一歩には全く関係ないので、私よりも作詞家作曲家を抱えている作家事務所を探して、そこに送るか、またはレコード会社のA&R宛て(作詞家を要するアーティスト担当など)に送る方が送る意味はあると思います。後はオーディションなどもネットでやっています。Sony Music Publishing のサイトなど、参考に一度ごらんください。

 ただし、こういうオーディションもほとんどの場合、曲がメインとなります。歌詞がある楽曲であっても、たとえばあるアーティストが歌うと決まった時に歌詞を書き直すことがあるので、作詞をメインにしてのオーディションというのがあるのかは、私もわかりません。

 レコード会社のプロデューサーともよく話すことですが、作詞の場合は、言葉だけを読んでも、歌詞として良いのかどうか判断しにくいという問題があります。

 歌詞は、いわゆる「詩」とは違います。アーティスト自ら作るのでない場合は、ほとんどの場合まず曲があります。そのメロディとリズムに言葉がどう乗っているかどうか、メロディにはめてみてやっと歌詞の良し悪しがわかるのです。字で読んでどんなに良い言葉でも、メロディに合わなければ、歌詞としては使えません。メロディやリズムをより生き生きとさせる言葉をはめる――それが一番であって、加えて意味や言葉の美しさやおもしろさ(キャッチーな響き)があれば、よりすばらしい歌詞になる。メロディとリズムの抑揚と、言葉のイントネーション、アクセントがぴったりはまらないと、曲を殺してしまう場合もあります。逆にメロディを印象的に生きさせることもできます。歌詞はその点が一番大事だと思います。

 以上の理由で、音楽なしの言葉だけを読んで感想を書いても無意味だと思います。私に作品を読んでくれというご希望には添えないと思います。ごめんなさい。

 以前にBBSでも書いたと思いますが、たとえばインディーズでもプロでもアマでも、バンドと組むという方法もあるかと思います。好きなバンドに「歌詞を書かせて」と売り込むとか。もしくは、自分で曲を作ってしまうとか。下手でもいいので、デモを作ってレコード会社に送るのもいいかもしれません。「曲はおいといて、言葉が新鮮だ。作詞だけしてもらおう」ってことになる可能性だって全くないわけではない。とにかく、私が言いたいのは、歌詞は音楽と一緒に披露された方が聴く方も判断しやすいということです。

★歌詞はどういうふうに書けばよいのか。

 歌詞の書き方は人それぞれです。音楽を聴きながら言葉をはめていく作業の中で、自分だけの書き方を模索するしかないと思います。私は私なりに、自分に規則を与えて書いてきました。個人的に好む表現というのもあります。しかし、それは私自身が作った私だけの美意識であって、他人には逆に美しくもなく、意味もない場合も多くあります(万人ににウケる歌詞の書き方があるのなら、私も知りたいー(笑))。

 そして、今の音楽フィールドを見ていればわかるように、今はアーティスト自ら作詞作曲をすることが多くなりました。特に作詞は多いですね。職業作詞家が書いた歌詞はもしかしたらバランスが良い仕上がりになるかもしれませんが、音楽はたとえ技術が高くても、必ず聞いた人の心を打つわけでない。たとえつたない言葉でも、そのアーティストの「今」を表現するまっすぐな言葉が、聴く人たちの心を動かすのだと思います。

 私は元々ミュージシャンというかシンガー・ソング・ライターでデビューしたのですが、いつのまにか作詞を始めて、メインの仕事になってしまいました。自分の曲に歌詞をつけるのと、他人が書いたものに歌詞をつけるのは、かなり違う作業です。苦しむこともあるけれど、おもしろい体験です。作詞は自らも音楽をやっている(楽譜を読めたり楽器を弾けたりできる。または音楽的知識を持っている)人のほうが、有利だとは思う(経験上)ので、何か楽器を習うのもいいかもしれません。

 しかし、音楽はいろんなジャンルがありますね。長年やってきた私ですが、洋楽の歌詞から学んで(見よう見真似で)書き始めたので、未だに、どんなジャンルの曲にも歌詞を書けるような職業作詞家になる力量もありません。シンガーが自ら書くことが多い中で、作詞家としての価値を見出すのは困難な時代だとも思います。聴く人の心に触れる言葉を作り出すのは、「技術」でも「知識」でも「経験」でもないと自戒をこめて思っています。自分らしい言葉、個性のある歌詞を生み出してください。

 そして、上にも書いたように、曲あっての歌詞なので、ただ「詩」を書くように文字を連ねるのではなく、作詞を志すのなら既成のメロディでもいいですので、それにあてはめる練習をしてみてください。書き続けていくと、いつか個性が出てくると思います。

 ――以上。作詞家志望の方への私なりの答えです。

 メールをくださったたくさんの方たち、あんまりお役に立てなくてごめんなさい。ただ、私も10代から音楽が好きで好きで、それで仕事をしていきたいと熱望していたので、同じような気持ちで夢を追いかけている人たちを応援しています。そして、音楽を作っている現場の人たちも、既成の作詞家よりも、若い才能を求めていることは確かです。いろいろな形でトライしてみてくださいね。