お盆休み
20030815

 冷夏の2003年、お盆休みに関西に行ってきました。
 数ヶ月前にDVDで見た『幻の湖』という映画の舞台となった琵琶湖にすっかり魅了された私め、 一日だけ相方に運転してもらって初めての琵琶湖観光ツアーをしました。1982年東宝創立50周年映画として封切りされたのに1週間で打ち切りになった、存在自体も幻のような映画『幻の湖』。物語自体は奇想天外な脚本に 、「はぁ??」「えええ?」連続の台詞で大爆笑のトンデモ系(すみません)なんですが、見る価値はあります (たぶん…)。最近になってカルトな人気がじわじわ広がり、いろいろな所で単館上映されていて、DVDも出ています。いろんな意味ですごい映画です。

 

京都の夜空

15日、相方と夕方に京都に着きました。駅でそっちで働いている知り合いと合流。車で銀閣寺まで連れていってもらいました。もうお寺さんには入れない時間だったけど、哲学の道をちょっとだけ見たかったのでした(歩いたことがない)。空の藍色が好き。

哲学の道を歩く

といっても、暗くてさっぱりわかりましぇん。実は京都はほとんど知らない私。御所とか二条城とか銀閣寺とかくらいは見たことあるんだけど…。もっとちゃんと歩いてみたいな。鴨川の河川に突き出したお店を「床」と呼ぶことを初めて知りました。

夜のお散歩

哲学の道、真っ暗だけどとにかくちょっとそぞろ歩いてみる。誰もいない。突然お堀の水がじゃばーんっ! て音を立てて「ぎゃあぁ」と声をあげてしまいました。目を凝らすと大きな鯉が泳いでいる。それがたまにジャンプするのですね。おお、水もきれいそうだ。昼間に歩きたかった…。

しあわせ地蔵

お堀の向こうにぽつんと灯りが…。近づくとお地蔵さんが祭られているんだけど誰もいない。お盆の風情が嬉しくて記念写真。お賽銭入れて拝んで、幸せのお守りも買って、護摩木も買ってお願い事書いてきたんだけど、すべて代金は目の前の貯金箱みたいなのに入れるだけ。…のどかだ。

うどん屋さん

銀閣寺の前のパーキングの隣りにあるうどん屋さんでお夕飯。コースを頼んだらたらふく食べられました。茄子の田楽おいしい! 生ふがおいしい! 胡麻豆腐もおいしい! うどんも薬味が盛りだくさん(薬味というより具のようだった)で、茗荷が大好きな私は大満足。

琵琶湖めぐり

次の日は相方とふたりで車で『幻の湖』ツアーにGO! 映画に出てきたシーンを周る旅……のつもりだったんだけど昼過ぎまで寝ていて計画倒れ。その上道を間違って近江八幡に行ってしまった…。でも近江商人の町並みってのがきれいだっていうのでそこで町を探索。おお、本当に昔のまんまの通りが!

近江商人の町並み

がずーっとあるのかなあと思ったら、一区画だけでした。これだけー? 町すべてがこれだったらいいのになあ。時代劇が好きなんでわくわくしちゃうのですが。もっときれいな所があるに違いないとさらに探索。

お土産屋さんみっけ

なんかおいしそうなもんが…! と期待したのだけど、最中でした…。いや、私がたまたま最中が苦手なだけなんですが。でも店構えが素敵。観光客が次々と入っていく。さらに探索と…。

運河?ただの川?

さらに進むと惹かれる風景が! ロンドンの小さなキャナルを思い起こさせる川。もしかしてこれは琵琶湖に続いていて昔は船で荷を運んだりしてたのかな。向こうに見える橋に向かってさらに歩いてみました。

人が少ない

観光地なのに驚くほど人が少なくて風景も美しくてすっかり気に入りました。もっとぎんぎんに暑いと涼しげな川がさらにありがたく感じるんだけど。まあ、電力危機だった関東にとってはこの冷夏が神風になったので、いいとしよう。

屋形船が似合いそうな…

そんな風景。進めば進むほど時代劇のような風景になる。町娘がなんとか問屋の若旦那と夜の逢引をしそうな場所。「そうは問屋が卸さない」とほくそえむ悪代官…などと陳腐な妄想をしてみたり。しかし「問屋が卸さない」って脅し文句が効くのは小売商だけだよね。よく考えると妙な言葉だ…。

辻斬りが出そう?

近江八幡は商人の町だからお侍さんは少なかったのかな。日本史にうといんで私の妄想はテレビの時代劇がせいぜい。司馬遼太郎の『梟の城』とか『国盗り物語』ぐらいの妄想をしたいものであります。しかしきれいな所です。湖周道路で琵琶湖を北に上るはずだったのを道を間違えてここに来て、逆に良かった。

セミの抜け殻

そぞろ歩きながら古い塀をふと見ると、セミの抜け殻が! 抜け殻を見るのってもしかしたら30年ぶりくらいかもしれない…。子供の頃は珍しくもなんともなかったし、カブトムシも蛍も母親の実家に行けばたくさんいたのに。今は家の庭でカマキリ見ただけで感動する。

塀をさらによく見ると

セミの抜け殻があちこちにある! ちょっと見回しただけでも6、7個はみつかってびっくり。石畳の隙間の土から這い上がってきたのね。何年も地中にいて、出てきたところがこんなきれいな場所でよかったね。

脱皮したばかり?

一匹のアブラゼミが塀でじっとしてました。日本の西南ではアブラゼミが少なくなってミンミンゼミばかりだって誰かが言ってたけれど。顔を近づけても動かない。これから初めて飛ぶんだろうか。それとも…。「やっと地上に出ても1週間しか生きられないんだよね…」と私がつぶやいたら、相方が「でも人生の絶頂期で死ねるんだよ」と言う。なるほど。そういう見方もあるか。

幻の湖水浴

いっぱい歩いたら暑くなってきたんで計画通り琵琶湖で泳げるかも? と、湖周道路に戻る。くねくね細い山道を走っていくと左手に映画に出てきた沖島が…! 「孤独だと思っていた沖島の裏に人がこんなに住んでいるなんて!」ロケ地に出会うたびにいちいち映画の主人公の台詞をそらんじる私たち(そんなの覚えてどーする)。ほんとはさらに北の竹生島まで行けたら完璧だったんだけど、ここで泳ぐことに。写真をクリックすると沖のほうで私が手を振っとります。写真の台詞は『幻の湖』ネタです。見てない人すみません。

彦根城に到着

これ以上北に向かうのは時間的に不可能なので彦根城に向かいました。もう夕暮れが近い。でも遠くにそびえる天守閣を眺めただけでわくわく。彦根城広いっ! 天守閣まで行き着けるのだろうか…。とりあえずお堀を渡る。お城がめっぽう好きな私。高い城壁の間を抜けながら、殿に仕えて城に侵入して命を落とす九の一の物語を妄想していた私であります。

お堀の亀

動物を見るととりあえず近づく私。お城前のパーキングにいた猫に声をかけたらさっさと走り去られ、お堀の淵で毛づくろいをしていた白鳥に近づいたら思い切り威嚇され。しょぼーん…。ふと水に目をやると、大きな亀がゆったりと泳いでいる…。気持ちよさそうだー。いいなあ…。今度生まれ変わるのなら、絶対お堀の亀だっ! と思った。毎日お堀の中で気ままにぷかーりぷかーり泳いで暮らす…。これだよ。

日が暮れそう…

天守閣への道はほとんど山登りで息ぜいぜい。石の城壁のほうが登りやすそうで惹かれた…(九の一好きだし、木登りとか岩登りが大好き。クリフハンガーはできませんが…って当たり前か)。その途中、城壁の間から彦根の町が見渡せました。きれい…。来て良かったなあ。

天守閣!!

やっと着いた〜。天守閣はすでに閉まっていて入れなかったけれど、ちらほらと散策する人あり。反対側の展望台の上で無心に太極拳をする女性あり。これだけ高い所にある天守閣の上から見下ろしたらさぞ気持ちよかろうのう。天下を取ったような気分になれましょう。映画『HERO』見て国王にだけはなりたくないなあと思ったけれど。

おや下のほうに

天守閣だけ独立してぽつんとあって、臣下たちはどこに住んでいたんだ?? と思ったら下のほうにそれらしき建物が。あそこも行きたかったなあ…。お城の中に入りたかったなあ…。忍者屋敷みたいにからくり部屋があったりしたら完璧! 迷路もいいな…(ただのゲームおたく)。

とっぷり日が暮れて…

天守閣の裏側から撮影。もう真っ暗。ふと気づくとお城には私と相方だけ…。もう写真もこれで限界ということで天守閣をバックにパチリ。この間、薮蚊の猛攻撃を受け、ぼりぼりかいた足は傷だらけに…。で、どうやって帰るの〜?(涙) と不安になりつつも、別な道があることに気づく。しかし、そこを降り始めて後悔…。彦根城、大きすぎじゃー。

琵琶湖巡りはまだ続く

途中に大きな庭園や梅林があるという道を選んだらこの暗さ。ライトアップされた天守閣だけが上のほうで輝いている…。この後小一時間「うわーん、誰もいないよー。真っ暗だよー」とふたり泣きながら山道を降り、暗くて広い梅林の中の一本道を抜け、やっとお城の外に出られました。ほっ。でも『幻の湖』ツアーはまだ続くのだった。

つけたし

 ――無事にお城から出られたらおなかぐーぐー。ちょっと車で移動したらお城から続く城下町風の美しいメインロードが。何故か横文字でキャッスル・ロードというらしいですが、おいしそうな食べ物屋さんが並んでいる。んで、近江牛 のお店をみつけて、そこで夕食。おいしいっ! 柔らかくて味付けもいい! 京都も素敵だけど、滋賀県も由緒ある場所がたくさんあって、食べ物もおいしくて、いいところだ。

 満腹になった私たち。最後の目的地、琵琶湖大橋に向かって車を走らせたのでありました。『幻の湖』の中でも忘れられないクライマックスシーン。 その橋の真ん中で、あーなって、こーなって、驚愕のラストが…! と、ネタばれしたくてうずうずしてしまう…いかんいかん。とにかく、その琵琶湖大橋を渡り「ズザーっ」とめでたくミッション・コンプリート! 私たちの短い旅 が終わった――はずだったんだけど、そこで関西に住む知り合いから電話が。で、今度は彼らが待つファミレスを探してドライブする羽目に…。

 観光もしたし、念願の湖水浴もできたし、友人たちと会うこともできたしで、短い夏の間に、夏らしい一日を過ごすことができました。すっかり『幻の湖』の宣伝みたいになっちゃったけど…。「あの橋本忍」が製作・監督・脚本ですからね…。当時映画関係者が黙するしかなかった状況が理解できる、いろいろな意味ですごい映画でありました。