Not Too Late
(c) Mitsuko Komuro

 

明け方眠る町 走り抜けてく
荷物は君とギター それだけでいいさ
レンガの壁と窓 置き去りにして
はるかな山を越える モーターウェイに乗ろう

ささやかな幸せ ひとは守り続け
夢を握りつぶす it's not too late (まだ遅くはない)

眠気の残る目で 君は笑って
遠くの町の影に投げキッスを送る

わかり合えずにいた 日々を今ふたりで
やりなおしてゆこう it's not too late

あしたの夢は ただ君しだいさ
遅すぎるとは まだ言わないで

何かを失うと 恐れ続けた
踏み出す勇気を今 励ましてほしい

あの山を越えても 道は続いてゆく
もう立ち止まれない it's not too late

あしたの夢は ただ君しだいさ
遅すぎるとは まだ言わないで
La la la la la la la……
La la la la la la la……

わかり合えずにいた 日々を今ふたりで
やりなおしてゆこう it's not too late

あしたの夢は ただ君しだいさ
遅すぎるとは まだ言わないで
La la la la la la la……
La la la la la la la……

作詞 小室みつ子
作曲 木根尚登


 木根ちゃんのソロアルバムの表題の曲です。1993年…。なんだか遠い昔。木根ちゃんのメロディはとてもナチュラルで優しくて、エモーショナルで、景色が見えやすいです。約10年前に書いたこの歌詞、例のごとく当時のことやら歌詞自体さえ忘れている私がいます。だから、こうしてコメントを書くときに、すごく客観的に自分が書いた言葉を読める。おもしろい体験です。

 10年前というと、私はちと個人的な問題で精神的にも身体的にも疲労困憊悩み狂っていた時期だったような…。今となってはその苦しかった感覚さえ薄い記憶になってますが。とにかく何かを選ばなくてはいけないんだけど、選ぶ勇気がなかなか持てなかった…。そういう時期だったなあ……と、個人的追想に突入しそうなので軌道修正。

 先日大好きな野茂選手がドジャーズに戻ったというニュースがありました。彼が追いかけて実行したものは「夢」という曖昧なものではなく、確固たる「目的」といえるもんですね。そして、彼は誰に背中を押されるでもなく、個人的な決意の元にかの地へ旅立った。イチローは文句なしにすばらしいけれど、頑なで不器用なまま変わらない野茂選手に、私は情緒的に惹かれます。

 「遅すぎることはない」……そう書いていた私も、いろいろ「もうこの歳だから…」と諦めることも覚えてしまいました。だけど「遅い、遅くない」なんて誰もわかるわけもないので、やりたいことはやりたいときにやればいいんだな…って、最近また思うようになりました。うん。がんばろ。(2002年2月)

back to menu


夜明けのスロー・ボード
(c) Mitsuko Komuro

 

君の肌に 指をすべらせながら
つかの間の 浅い眠りに落ちていた
夢はいつも僕を 過去へと導き
悲しみの記憶へと たどる

愛せずに 手放してきた毎日
愛しても 離れていったものたち
暗い海の中を 漂い続ける
木切れのような夢を みてた

Set me free from my sorrow
(哀しみから僕を解き離して)
目を開けると 君がほほえむ
Set me free from my sorrow
そのまま抱きしめて

気まぐれな 星の光をたよりに
長い旅を ただくり返していた
波に打ち寄せられ ひとりで過ごした
果てしない夜が今 終わる

Set me free from my sorrow
手をのばすと ぬくもりがある
Set me free from my sorrow
君にたどりついた

ふたりで 漕ぎ出そう 夜明けのスロー・ボード
違う 旅路へ

Set me free from my sorrow
目を開けると 君がほほえむ
Set me free from my sorrow
そのまま抱きしめて

Set me free from my sorrow
手をのばすと ぬくもりがある
Set me free from my sorrow
君にたどりついた

作詞 小室みつ子
作曲 木根尚登


 このタイトルを決めた理由だけはしっかり覚えています。って、威張れることじゃないな…。だってこのタイトルは映画のタイトルそのままなんだもの。ただし、その肝心の映画のほうをすっかり忘れてる(T_T) 私って……だいじょうぶかな。ただこのすてきなタイトルに惹かれてそのまま使わせてもらいました。映画大好きなので、映画のシーンから歌詞が喚起されたりすることはよくあります。

 しかし「君の肌に指をすべらせながら…」って導入、木根ちゃん用の歌詞らしくないなあと、読み返して意外に感じてます(って作者がお思うなよ)。優しさが一番に出る木根ちゃんだけれど、たまには「男」ってのを感じさせる歌詞もいいかなあって思ってトライしようとした記憶はあるけれど、この歌詞かどうかはさだかではありませぬ。…忘れててばかかりで解説にならんじゃないかっ。…すみません。

back to menu


Don't Turn Away
(c) Mitsuko Komuro

 

人込みの中で 足早に行き過ぎる
髪型の 違う 君をみかけた
昔のことだと 笑いとばせなくて
まだ痛む 胸を押さえつけた

何かをやり残し 何かを見落としてた
臆病な あの頃の 僕がいる

大切なものは なくしてわかるね
いつか自分を変えるから 君と
Let's try Again, Let's try Again, Let's try Again
(もう一度やってみよう)
君が求めてた すべての重さに
二度と目をそらしはしない 決して
Don't Turn Away, Don't Turn Away
(顔をそむけないで)

涙を見せても くちびる噛んでいた
君の顔 今も忘れないよ
どんな時だって あきらめない強さ
僕にただ 教えてくれていた

何かを乗り越えて 何かをみつめてゆく
苦しさを 分け合える はずなのに

たやすくくじけちゃ 何もつかめない
今わかりかけるものを 君と
Let's try Again, Let's try Again, Let's try Again
ふたりをとりまく すべての痛みに
二度と負けたりはしないさ 決して
Don't Turn Away, Don't Turn Away

大切なものは なくしてわかるね
いつか自分を変えるから 君と
Let's try Again, Let's try Again, Let's try Again
君が求めてた すべての重さに
二度と目をそらしはしない 決して
Don't Turn Away, Don't Turn Away

作詞 小室みつ子
作曲 木根尚登


 なんだか80年代の香りがする歌詞ですね。名曲「My Revolution」の歌詞に似てるフレーズが一瞬あるからかもしれませぬ。って、自分の歌詞を他人のように評論してていいのか。それに、涙流しながらも唇噛んでいる女の子――ってところが、渡辺美里さんを思い出させます。彼女が18歳でデビューしたての頃に初めて美里さんに会いました。私のラジオのゲストにも来てくれたこともありました。デビュー当時の彼女は本当に少女そのもので、愛らしい目でいろんなことを語り掛けそうな雰囲気を持ってました。彼女の「君に会えて」のPVが当時好きでした。当時エピックソニーのビデオ班のディレクターだった友人のイサクが撮ったものだけれど、ただずーっと美里さんの素顔のドアップにカメラを固定させて、美里さんはカメラをじっとみつめながら歌う。…と、最後にぽろりと本当の涙が流れる…。あのPVがあまりに好きで、会うたびに「あれはかわいい。曲も大好きだけどPVの美里ちゃんはかわいい」と絶賛していたら、「みつ子さん会うたびにそれ言う」と美里さんに苦笑され ていた。毎回言ってるなんてババアの繰言みたいじゃないか…うう。でも、そのくらい好きなのさっ。

 ――って、木根ちゃんに書いた歌詞のコメントなのにすっかり脱線してますが。負けず嫌いで男の子みたいな少女ってのは、なんだか惹かれます。そういう主人公で小説も書いたりしてました。TMの「Time Passed Me By」も、そういう女の子を想像して書きましたっけ。脱線したついでに、イサクの映像的センスもすばらしいです。彼はストリート・スライダーズ、TM、佐野元春さん、千里くん、当時Epic黄金時代のアーティストのPVを数々手がけています。

 ふと書きながら思ったけど、上の歌詞「夜明けのスローボート」の女性は、この曲の女の子とまた違うタイプですね。大人になったら 「夜明けのスローボート」で描いたみたいな女の人になりたいと、小さい頃思ってましたっけ。いつも遠くから恋人を見守り、彼が疲れたら戻って来る安らぎの場所――みたいな女の人。んで、いいかげん大人になった(十分過ぎる!)私は実際はどうかというと、…………うーーーん。違うなあ(笑) 張り合ったりくだらないことでケンカしたり。子供のままだ。

back to menu


ホントの君 ウソの君
(c) Mitsuko Komuro

 

耳たぶとほほが 赤く染まっている
泣き笑いの顔に降る 雪が溶け出した
”涙じゃない”なんて 嘘をつかないで
凍えた肩抱き寄せて 守ってあげたい
強い君が 弱い君 ささえ過ぎている

寂しい時には 寂しいよと
誰にでも 言えたなら
ひとり抱え込んだ その痛みも
少しだけ 消えるはず

人の心なんて 不思議なものだよ
いい子だから 愛されるわけでもないからね
強い君が 自由な君 隠しすぎている

もう恐れないで ありのままの
君がただ 好きだから
がんばり過ぎないで 僕の胸で
思いきり 泣いてごらん

My Daring, Don't be afraid
(かわいい人よ  恐れないで)
ホントの君 ウソの君 どれも君
I'll be with you, Don't be alone
(そばにいるから ひとりにならないで)
心からの笑い顔 見せてくれ
My Daring, Don't be afraid
ホントの君 ウソの君 どれも君
I'll be with you, Don't be alone
僕はいつも 君の そばに

作詞 小室みつ子
作曲 木根尚登


 この曲は忘れない。忘れられるわけがない! 木根ちゃんの傑作小説「ユンカース・カム・ヒア」が映画化されて、それに使われた曲です。作詞をするために、まだ効果音も入っていないラフな段階のアニメをビデオで見て、思わず涙してしまったくらいいい話です。主人公があまりに健気でちょっとつらくもあり、最後にユンカースが○○○○○なった途端、ぽろりと泣いてしまいました。このビデオ見た途端、絶対使いたいと思った言葉がありました。「耳たぶ」(笑) なんだか、この主人公の女の子の無垢な孤独が「耳たぶ」って言葉とリンクしてしまったのでした。なんでだろう? 謎だ…。

 しかし、このタイトルの小説がまさか本当に書かれるとはと、びっくりした記憶があります。何しろ元をたどると、小室てっちゃんがロンドンに住んでいた頃の話。ロンドンのペットショップでてっちゃんが買った犬がユンカース。りっぱなおひげのあるかわいいシュナウザー。RECのスタジオにもしょっちゅうユンカースがいて、みんなが「ユンカース、カムヒア! (おいで!)」と何度も何度も言ってました。んで、ある日、木根ちゃんが「ユンカース、カムヒアってタイトルで小説書くよ」って言っていたんだけど、てっきり冗談だと思っていた私(^^;;; でも、実際の小説はすばらしいお話でした。すごいぞ、木根ちゃん。

 んで、まさにこの歌詞はあの主人公の女の子のように、「いい子でありたい」とがんばりすぎて、弱い自分を見せることができない誰かに向けて書いたものです。我慢していい子をやっていても必ず愛されるわけではない …という大人ならわかることが、子供の頃にはわからない。親に愛されたい、友達に好かれたい、誰かに認められたい、そういう気持ちから無理してしまう子供もたくさんいると思う。それはもしかしたらある種の呪縛にもなりかねなくて、「こんなダメな自分を見せてもいいんだ」って、わからせてくれる誰か(それでも愛してくれる誰か)がみつかったら、きっとこういう呪縛から解放されるんでしょう。

 私も子供の頃は「いい子になりたい病」だったかも…。今は? はー。解放されすぎです(涙)

back to menu


Bye Bye Bye
(c) Mitsuko Komuro

 

グラスいっぱいの水の中
コインをおとしてく
そんなゲームを思い出した
ふさぎこんだ君を見て

心に悲しみのコインを
たくさん落としたら
瞳のふちにあふれだす
涙こぼれたら 負けさ

Bye Bye Bye 今 サヨナラと
手を振るのさ きのうの君に
Bye Bye Bye 愛した人も
ニクい人も つらい思い出も
すべて どうでもいいことだと 言える
そんな日のために Say good-by

越えられそうにない”きょう”でも
いつか”あの日”になる
立ち止まる君 置き去りに
時は決して止まらない

Bye Bye Bye 今 サヨナラと
見送るのさ 悲しいことは
Bye Bye Bye ずしりと重い
過去の荷物 肩から降ろして
心が少し軽くなれば いつか
走りたくなるよ through the sky

Bye Bye Bye 今 サヨナラと
手を振るのさ きのうの君に
Bye Bye Bye 愛した人も
ニクい人も つらい思い出も
すべて どうでもいいことだと 言える
そんな日のために Say good-by

作詞 小室みつ子
作曲 木根尚登


 「ホントの君 ウソの君」のカップリング曲。水がたっぷり入ったグラスに一枚ずつコインを落としていって、水があふれたら負けっていうゲーム。これもまた何かの映画のシーンを思い出して書きました。水の表面張力ってかなりすごくて、けっこうコインを何枚も落とせるんですよね。あれはフランス映画だったかな。そのシーン以外、全く思い出せません。あのグラスの水が、なんか、心にたまっていた感情が堰を切って流れる感じに似てた。

 私みたいにすぐ過去のこと忘れる人間でも、ふと、何かの拍子に失くしたと思われた記憶がよみがえってきて、胸が苦しくなったりします。ずっとひきずって詳細をくまなく覚えている人にとっては、悲しい思い出は本当につらいでしょうね。昔好きだった探偵小説(アメリカの大学教授でもある作家。名前度忘れ)があって、酔いどれ探偵シリーズというヤツなんだけど、その探偵は、ハードボイルドの例に漏れず、フィリップ・マーロウのように孤独。彼のモットーは「Forgive(許すこと)」。事件を解決する中で、本当に愛した女性にまで裏切られて、心はずたずたになるんだけど、ただ彼はつぶやくのみ。「一番大事なことは許すことだ…。Forgive....」。傷ついたゆえの深い許しだと思う。

 私のモットーは「Forget(忘れる)」ですが…。とほほ。でも、これもなかなかいいものですよ。傷ついた気持ちさえ忘れられれば、相手のこともずっと好きでいられるから。それでも好きでいられない人は、そういうことがあったこともすべて忘れます(笑) うーん。全く哲学がないな…。

back to menu


クジラが飛ぶ日
(c) Mitsuko Komuro

 

やけに晴れた昼下がり
ビールあけて 転がれば
頭を駆け巡りだす
ちょっと陽気な 白昼夢

君はカウチに寝そべって
テレビの中 SFファンタジー
僕の頭をのぞけば
退屈など しやしないのに

窓の向こうの 青い空
大きなクジラが 飛んで行くよ
Day dream ハレルヤ! いいこと ありそう
Day dream ハレルヤ! 君にも 見えるかい

君は心理学の本を
ベットの中に 持ち込むよ
瞳の奥の宇宙は
学問だけじゃ 探れないのに

君の瞳の 宇宙には
ブルーの鳥が 羽ばたいているぜ
Day dream ハレルヤ! きれいな イリュージョン
Day dream ハレルヤ! ふたりで 見ないか

Day dream ハレルヤ! 本など 捨てなよ
Day dream ハレルヤ! ビデオも 止めなよ
Day dream ハレルヤ! きれいな イリュージョン
Day dream ハレルヤ! ふたりで 見ないか

作詞 小室みつ子
作曲 木根尚登


 「クジラが飛ぶのかよっ!」 BY 三村。と、まずタイトルにツッコミ。これ以下3曲、木根ちゃんのソロアルバム「Riquid Sun」に収録されたものです。木根ちゃんに書く歌詞は、わりと真面目で純情な感じが多い(私の中でだけど)ので、アルバムの一曲、ふっと気楽になれる歌詞を書いてみたくて書きました。白昼夢のようにいろんなことを想像して楽しんでいるお気楽な木根ちゃんてイメージも新鮮かなとも思い…。

 きれいなイリュージョン……またの名を妄想とも言う(笑) 歌詞も小説も私の妄想の産物なので、妄想万歳です。何かを発明したり、奇想天外なアイディアというのは、みんな妄想というたぐいまれな想像力から生まれるわけで。平和な昼下がり、なんとなーく、楽しいこと想像してゆったりしたいなあ。床に転がって寝てる猫どもは、どんなイリュージョンを見ているのでしょう。――と思って、そういえば、去年SFバカ本用に、猫たちのテレパス・ネットなるものをでっちあげて短編を書きました。「キャッツ・マター」というタイトルです。でっちあげのストーリーを構築していく過程が好き。妄想は楽しいな。

back to menu


隣のサンタクロース
(c) Mitsuko Komuro

 

ドアの外飛び出し 駆けだした鼻先に
雪のつぶが ひんやりと挨拶

サエない冬休み 送るアイツの窓を
君も一緒に たたきに行こうぜ

Merry Christmas
きょうだけの
誰にもわかる おまじないみたいな言葉
White Christmas
はしゃいでる
君を見てると キスしたくなる

誰にだって悩みも メゲることもあるよね
そうさ たまには 景気つけようぜ

Merry Christmas
迷っても
繰り返せない 一度きりの人生さ
White Christmas
ふたりで
途方もないこと やってみたいね

とびきりの元気を 僕に運んでくれる
君はいつも 隣にいるサンタクロース

作詞 小室みつ子
作曲 木根尚登


 かわいい歌詞だわ…。でも語尾が「〜ようぜ」なんて、木根ちゃんぽくもなく。ううう…。実はコメントに窮しています。覚えがない……(T_T) すみません。

 代わりにといってはなんだけど、木根ちゃんのこと書こうかな。木根ちゃんは本当に真面目な人です。サッカー大好きで、スタジオではよくスポーツ新聞でサッカーの記事を読んでいたり、ケーブルテレビでサッカーの試合を見てたりします。んで、サッカー無知な私がボケた質問をすると、眉を寄せて面倒くさそうに「いいから応援して!」と答えてくれます。真面目だ…(?)

 去年のソロRECの時は、びしょびしょでスタジオに駆け込んで来たことがありました。横浜だったかでサッカーの試合があって、そこで雨に打たれながら応援していたそうな。真面目で熱い人だ。去年(2001年)はウツのソロも含めて、しょっちゅうスタジオで一緒でした。TM以来、10数年の付き合いなので、特にスタジオの作業で困ることもなく、たまに会ういとこか同級生みたいな感じです。

back to menu


心の旅先
(c) Mitsuko Komuro

乾いた土を踏んで ただ歩き続けてた
異国の言葉交わし 今 宿にたどり着く
君の手紙読み返して 今夜も眠るだろう
窓に広がる星たち 全部持ち帰りたい

いくつも旅をして 最後に戻るのは
変わらぬ安らぎに満ちてる君のもと

明日になればこの町を出て 次の場所向かう
バスに乗り込む前に あの市場を歩こう
あるだけの銀貨で君に 何を買ってあげよう
会いたくなるたびに ふと 何かを探している

いくつも夢を見て 続けてゆけるのは
心の旅先で 待つ君がいるから

僕が見てるこの風景 君と分け合いたい
ふたり抱きしめ合う日が いつも待ち遠しいよ

いくつも夢を見て 続けてゆけるのは
心の旅先で 待つ君がいるから

作詞 小室みつ子
作曲 木根尚登


 短い歌詞だけど、これは心に残っています。単に個人的に気に入っているだけだけど。私は旅の歌詞が多いかも。それも都会ではなくて、どこかの田舎町。これは外国の田舎町。旅に出ると、いとしい人のことを強く感じます。自分で出たくて出た旅なのに、いとしい人やいとしい場所(日本)を思い出して寂しくなる。

 いろんなところに行ったけれど、一番美しい場所は、ギリシアの小さな島でした。アテネは無機質で灰色でとてもつまらない町だったけれど、船に乗ってエーゲ海の島に着いた途端、そこは鮮やかな色に溢れたすばらしい場所でした。港にはたくさんの猫たちがのんびりと寝転がって、海を見ていたりする。壁という壁が真っ白で、窓やドアは青や赤や黄色という鮮やかな色に塗られていて、太陽光線の中より鮮明に浮かび上がっていました。

 しかし、旅をして初めて言葉が通じない怖さを味わいました。アテネ以外では英語も通じない。だいたい、文字が読めない! 「Σ」だの「π」だのの文字が入っていて、どう発音するのかわからない単語が並んでいる。でもなんとか旅ができたのは、同行者がバックパック旅行の達人、蔵前仁一(雑誌「旅行人」編集長)と小川京子夫妻だったお陰であります。のちに日本で、ハンス・シルベスターによる「Cats in the Greek Islands」という写真集を買ったんだけど、まさにあの写真の中にある島の風景そのものでした。なにより猫たちが生き生きとして躍動的で美しい。ああ、またいつか行きたいものです。

back to menu